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従来の集合論的表現や治療学モデルでは、副体の静的な状態しか表していない。ということは、実体が一切表現されないということだ。
一方で圏論によって実体を考察する場合も、結局は副体の具体的な状態は等閑視されてしまうのである。
図式を用いた表現では、厳密性を犠牲にすることで両者の持つデメリットを上手く帳消しにすることが出来る。



§1 規則

規則 - 1(基線について)



副体間の干渉を全て同時に表すためには、従来のように副体を点で表す方式は都合が悪い。
そこで副体を表す記号に横線を対応させて副体に見立てる。これを基線と呼ぶ。

規則 - 2(事象線について)

(図式については規則1を参照)

斜めの線は、副体間の干渉に対応する。これを事象線と呼ぶ。
事象線の始点と終点は必ず基線に結ばれる。

規則 - 3(横軸の関係について)

ある基線間の事象線について、左側にある事象線は説明するもの、右側にある事象線は説明されるものである。
これは具体的には因果関係、時間経過、事前条件や仮定としてのメタ記述などが意図される。
特にモデル上で最も左に置かれる事象線は、概ね定義や自明な事象を示す。

全ての事象線は、この規則に従って演繹的に説明が与えられるか、別な方法で正当性が与えられるかのどちらかでなければならない。

規則 - 4(作用について)



2基線間を交差して置かれる事象線は作用を表現する。
これは規則2の特殊な場合と見なすことが出来るが、機械論において作用は特別な意義を持つから、ここでは規則に含める。

規則 - 5(形式的な干渉について)



始点と終点の間で別の基線をまたぐ事象線は形式的な干渉を表現する。
これは個別的な軸の上での干渉について、一般的な軸における干渉だと見なせるという意味である。

この規則は副体の一般性を表現するとも言える。
その場合は個別的な基線から一般的な基線に向けて事象線が置かれ、右側に置かれるこの方向の事象線に説明を与える。
しかしその逆の方向は個別的な説明が与えられねばならない。

規則 - 6(確率的事象について)



始点または終点の片方を共有する事象線は確率的事象を表現する。
始点を共有する場合は単一の状態から複数の異なる状態が現れることを意味する。
終点を共有する場合は複数の異なる状態から単一の状態が現れることを意味する。
点の共有を明確にするために、丸を付加して表している。



§2 論理

既に記述された基線と事象線から導かれる操作を挙げる。
規則3より、論理によって導かれた事象線は右側に記述していく。

論理 - 1(事象線の結合、分解)



一方の始点ともう一方の終点が同一の基線に結ばれる事象線からは1つの事象線が得られる。(事象線の結合)
逆に、ある事象線が始点と終点の間で基線をまたぐ場合、その基線を境にした2つの事象線が得られる。(事象線の分解)
単に副体A→B,B→Cという干渉からA→Cを導くこと、またはその逆の論理を表す。

論理 - 2(作用の導入、消去)



2つの基線間を異なる向きに結ぶ事象線からは作用を得られる。(作用の導入)
逆に、作用からは2つの異なる向きの事象線が得られる。(作用の消去)

論理 - 3(事象線の逆転)



同一の副体を示す2つの基線を結ぶ事象線からは逆向きの事象線が得られる。

論理 - 4(確率的事象の導入、消去)



1つの基線を始点または終点として共有する異なる事象線からは確率的事象が得られる。(確率的事象の導入)
逆に、確率的事象からは始点または終点を1つの基線に共有する2つの事象線が得られる。(確率的事象の消去)

論理 - 5(基線の導入、消去)



規則に従う限り、任意の基線を導入することが出来る。(基線の導入)
規則に従う限り、任意の基線は消去することが出来る。(基線の消去)

これは後述するメタ論理からの要請であって、モデル上の操作としては表すことが出来ない。(ここに挙げた図式は意味のない自明な論理を示している)



§2.1 メタ論理

論理を記述するモデルについての論理、いわゆるメタ論理をいくつか挙げる。
メタ論理によって関係を持つ2つのモデルは、機械論における実体圏の操作によって説明される。
つまり通常の論理が副体の操作を記述するのに対し、メタ論理は実体圏の操作を記述する。
その性質上、モデル上の操作としては表すことが出来ない。

・等価なモデル

2つのモデルが基線と事象線の1対1の変換について可換な場合、実体として同じ目的を持つことを示す。
実体圏で言えば圏同型に当たる。

・同値なモデル

論理の適用によって等価なモデルにすることができる場合、やはり一般的には実体として同じ目的を持つことを示す。
先の記事で実体圏の同値に触れたが、この概念はまさに副体の一般的な領域における等価性を意味しているのだ。

・双対的な操作

先に挙げた論理はすべて双対的な2つの操作から成っている。
このようにモデル上の操作を圏上の操作によって記述できるとき、必ず双対となる操作が存在している。
これもまた、メタ論理の1つである。



§3 解釈

先に挙げた規則と論理のリストでは最低限のことしか書いていないから、副体・実体両面からその意義を詳しく説明してみよう。

横軸について

規則1~3はモデルを定義する最も基本的な規則である。
規則3はモデルに実体の概念を持ち込む意図がある。これを表現するために、規則1と2を線で表現するのだ。
選択的機序は副体間の可能な干渉を一切制限しないから、横軸には特に意味がない。
因果的機序では横軸が因果関係を表すのだが、論理2は依然適用できる。時間を表す場合でも同様である。

これは、横軸の連続的な関係について考えてみればすぐに分かる。
因果的機序では右にある事象線は左側の事象の結果を示すが、結局この事象線もさらに右側にある事象の原因として解釈されるのだ。
従って、原因としてしか存在しえない事象というのはあり得ない。結果の方も同様である。
論理2は横軸の関係を一般化したうえでの操作だと言える。

ところで規則3の関係は基線上にある事象線の始点や終点で表現されているから、正確に言えば横軸の関係は基線上で定義されるのである。モデルそのものの左右は特に意味がない。
一般的に表現すると、干渉の連鎖的な関係性は任意の副体によって相対的に定義されると言える。

これは時間について考えると、重要な事実を指摘していることが分かる。
つまり、このモデルはいわゆる絶対時間の存在を最初から否定しているのである。
時間についての考察を進めると長くなりそうなので、後々必要になった段階で詳しく考察するとしよう。

確率的事象について

規則4~6は、先の3つの組み合わせに適切な解釈を与えたものである。
中でも規則6の確率的事象については、確率という表現が意味するところを考えてみる必要があるだろう。

ある副体A,Bについて干渉A→Bが定義されるとき、Bが受け取る情報はAのみによって定まる。Aの情報が定まれば、この干渉によってBが受け取る情報はただ1通りに定まる。
しかし他の副体Cがあって、干渉C→Bも定義されているならば、AとCが定まったとしてもBの受け取る情報は一般的には不定であり、即ちこれが規則6にある確率的事象なのである。

これは事象線の終点を共有する場合であるが、始点の共有も確率的事象だとはどういう意味だろうか?
この疑問も横軸についての考察と同様に、連鎖的な関係を考えるとよく分かる。



副体A,B,C,D,Eについて干渉A→C,B→C,C→D,C→Eが定義されるとき、始点を基線C上で共有する事象は確率的事象である。
ここで事象の始点は副体Cただ1つだから、実際には確率的事象とは言えない気がする。
しかし実際には終点を基線C上に共有する事象によって、副体Cの情報を1通りに定めることは出来ないのである。

これは個別的な問題ではないが、この関係を確率と表現するには一般的に過ぎるかもしれない。
むしろ確率的事象の真意は、作用と絡めた考察によって現実味を帯びてくるのだ。

同一の副体を表す2つの基線間に1つの事象線があるとき、次の順序で論理を適用するだけで確率的事象を得られる。
逆向きの事象線を得る(論理3)→作用を得る(論理2)→2つの基線間に別の基線を導入する(論理5)→事象線を分解する(論理1)→導入した基線に始点および終点を共有する2つの確率的事象を得る(論理4)



他にも、逆向きの事象線を得たところで基線を導入して、確率的事象を得た後に作用を見出すこともできる。
これは作用と確率的事象はまさに表裏一体の概念であることを示している。

作用とは副体上のある瞬間の情報が次の瞬間の情報を決定するような現象であるが、これは明確に計算可能かどうかは不問とされている。
従って作用についての適切な解釈としては、副体上のあらゆる情報が確率的に1つの状態を生成して、それを元に個々の情報が確率的に決定されると言える。
だから作用を示すモデルには、2つの確率的事象が見いだされるのである。

逆に言えば、このような形式で2つの確率的事象が見いだされれば、そこには作用もまた定義される。
これは今まで扱ってきた作用より一般的で、任意の2副体(+干渉場とする副体)によって構成される。圏としては互いに射を持つ3つの対象を含むような、次の図式が可換となる。



この図式から分かるように、結局は一方の副体と干渉場の間の作用と解釈することも出来る。
機械論でも、このことは任意の副体は干渉場としても解釈されることから理解できる。

基線の導入・消去について

最後に論理5の意味を考察する。

ここで言う「規則に従う限り」とは、形式的には「どの事象線の始点や終点でもない」という意味である。
規則5に示されているように、基線と事象線の単なる交差は形式的な干渉を意味する。これは個別具体的には干渉場を通した2者の干渉かもしれないし、複雑な副体から単純な副体への自然な干渉かもしれない。
いずれにせよ、モデル上で基線を特徴づけているのは最も一般的な副体最も個別的な副体がどのようなものかであり、これ以外の副体はこの2つから導かれるものである。
だとすれば、他のどんな副体にとって一般的でも個別的でもないような副体は、そのような特徴を考える上では不要であると言える。

論理5の意味とは、この基線の特徴を変化させない限りという意味であり、それが形式的な手段として提供されているのだ。

ちなみに基線と事象線の交差は事象線の分解の適用によって例外なく消去することが出来る。
モデル上の全ての基線について個別具体的な考察を行う場合、この操作によって全ての基線に何らかの事象線を結ぶことも出来る。
逆に事象線をどのように結合しても、少なくとも2つの基線が必ず残る。



§4 応用例

治療学4時限目、直感による干渉の素朴的なモデル



基線A,A´とB,B´のそれぞれ別のタルパ(あるいはタルパー)の副体だと考える。
A´が発話に関する副体、B´が聴覚に関する副体、AとBは会話に関する副体である。

左右を逆にして論理1の適用と捉えるならば、複数の副体を介する具体的な干渉からは、常にその間の副体を取り除いた直感的な干渉が見いだされることを示している。
また左右でモデルそのものを分割して論理5の適用と捉えるならば、そのような具体的な干渉と直感的な干渉は実体において同値であると言える。
さて、副体から見た実体とは、何を意味するのであっただろうか?


治療学4時限目、版権タルパのモデル



ある外部のXが版権キャラに干渉したという事実をタルパーが受け取る。タルパーがタルパに干渉することは自明であるから、事象線の結合によってXからタルパへの干渉が得られる。

すぐに分かる通り、これは直感についてのモデルと全く同一である。
即ち、具体的な干渉から直感的な干渉を得ることと版権キャラとタルパの同一視は(個々の場合には他の副体が考慮されるにせよ)少なくとも実体の同値によって説明されるのであり、そのような一般性の上においては同一の論理を適用することが可能である。


干渉・変化・発生モデル



例えばAがタルパーの副体に、BとB0がタルパの副体に当たる。B0とは、タルパに属する別の副体を全て抽象化してこのように表した。
A,B間の事象線は干渉を、BとB0間の事象線は変化・発生を示す。


感覚化理論における、会話オート化を認知する過程



AとBはそれぞれの副体を、XとYは適当な干渉場を示す。
これも一般化すれば先の2つと同値であるが、こちらは具体・抽象性というより経路としての扱いに近い。
図式上ではこの2概念が同様に表されるから、結局は実体として同じ目的を有するのである。


しりとりの思考実験



AはB,Cとのしりとりの結果を、適当な干渉場Xを通してDに伝える。このとき、Dは干渉場Xから受け取った情報を通してB,Cを区別することは不可能である。
そもそもしりとりの思考実験の意義は「主客の区別を存在から定めることは出来ない」というものであり、これは感覚化理論以降は暗黙の原理として採用されてきた。
つまり、本来ならばこの思考実験をモデル化して説明することには何の意味もないのであるが、区別することが出来ないという事実を確率的事象によって表現している。

このモデルは事実をそのまま表しているから、ここから論理を適用して有意義な事象線を考えることが出来るのだが、いずれもB,CからDへの確率的事象に帰結することが要諦である。
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