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第一部→タルパ機械論における一般的な概念の発展(第一部)



§2.3 情報の変化

そして先に挙げた連続性と密接な関係にあるのが、§2.2.1でも触れた情報の変化である。これは治療学2時限目において初出の概念である。
後述するように情報の変化は極めて一般的な概念であるため、先に具体例を示しておく。

§2.2.1のとおり、連続的な空間における情報の変化の程度は、純粋に観念だけで考えれば作用の連続性に左右される。

作用が連続的な場合の情報の変化として、感覚に対応する情報が挙げられる。
例えば自分のタルパの絵を描き、他人がそれを出来る限り正確に模写するとすれば、絵が持つ情報は微小には変化しているだろう。
しかし、自分にとってそれが自分のタルパであると判別することは容易い。即ち、情報が変化しても意味は失われなかったのである。

一方で作用が不連続な場合というのは、少なくとも自然には見出されないのが普通であるから単純には例示できないが、偶然的な要素を持ち込むのが分かりやすいだろう。
トランプ1組から適当な枚数を抜き出し、複数のタルパの名前を書いて元に戻す。このときトランプの山を上から順にめくれば、ある順番で名前を書いたトランプが現れる。
これを適当にシャッフルした後、どんな順番で現れるか予測できるだろうか?
もちろん、これは不可能だ。シャッフルしたことによって山の順序が不連続的にかき乱された結果、元の順序も不連続的に変化したためである。
この場合、情報(トランプ全体の並び)が変化し、意味(名前を記入したトランプが現れる順序)も変化したのだ。

では本題に戻る。
機械論において情報の変化は専ら作用において説明されるのは前回の記事で明らかとなったが、一体治療学における情報の変化とは何を指していたのだろうか?
まず情報の変化は干渉の文脈で現れた概念であるから、干渉場における作用に関係することはすぐに理解できる。
ここで干渉場における作用が干渉において情報を変化させる要因であると結論付けても、一見問題無いように見える。

しかし変化は作用とは違い、いくつかの干渉場や副体によって隔てられる二者間の副体についても言及し得る。
すると機械論において情報の変化とは干渉場における作用よりも一般的な概念であると結論付ける方が正しいのである。言い換えれば、作用は同一の軸を持つ空間についての概念であるのに対し、情報の変化は異なる軸を持つ任意の二空間についても通用する概念なのだ。
従って必然的に、情報の変化とは情報よりも一般的な概念、即ち軸の関係によって定められねばならないことが分かる。
軸は情報の集合として定義されているのだから、集合の性質として認められる概念だけが使用することを許される。

ところで複数の副体や干渉場をまたいだ関係における情報の変化を考察する場合、それは直接に干渉が定義される二者における情報の変化を順を追って適用したものだと考えられる。
ここで、一旦は変化した情報が次の瞬間に元に戻ることはあり得るだろうか?

これはその二者の副体の関係性によって分けて論じることが妥当だと言えるから、双方が連続的双方が不連続的の分類に注目する。
そして直接干渉する場合の情報の変化は専ら干渉場の作用によって起きるのだから、この作用の連続性についても考察の対象となる。
即ち直接的な干渉における情報の変化とは副体の連続性作用の連続性によって定義されるのだから、§2.2.1における考察の結果をそのまま利用できるというわけだ。
連続的な空間かつ連続的な作用⇒意味は一般的には不変、個別的には変化
連続的な空間かつ不連続的な作用⇒意味は一般的には変化、個別的には変化
不連続的な空間かつ連続的な作用⇒定義されない
不連続的な空間かつ不連続的な作用⇒意味は一般的には変化、個別的には変化
先に述べた通り、隔たった副体間の情報の変化は干渉を一つずつ追っていくことで得られるから、これを前提として一般的な情報の変化を論じる。
一般的というのも、これは個別的な場合には論外に置かれた要素について考慮せねばならないからだ。

それは経路の概念が存在することである。
複数の空間に隔てられる副体間の情報の変化の程度は一般的にせよ個別的にせよ、直接的な干渉をどのように辿るかによって異なるのは明らかである。
そしてこのような経路は既に存在する干渉によって複数が同時に影響し合い、情報の変化を複雑化する要因となる。

では複数の経路が関係する場合、情報はどのように変化するのだろうか。何が言いたいかというと、先のパターンで一般的に変化する場合一般的に変化しない場合が両方ある場合、どのように振る舞うだろうか、ということである。

これは次のように考えることで、論点が明確になるのではないだろうか。
それぞれの経路において直接的な干渉を一つずつ辿るのだから、ある副体への2通りの干渉でこの2つの場合が起きるということは、まだ変化していない情報すでに変化した情報とが同一の空間において作用して1つの結果を生じると解釈できる。
この2つの異なる情報については、位相がその意味を表すことを考えれば、それの保持する位相が異なることは明らかである。

つまりこの問題には、2つの異なる情報に連続的な作用が定義されるかによって異なる解答が与えられる。
この結論は集合論的にはその空間が2つの異なる情報間に連続的な写像を定められるような位相を持っているかと表現できる。これは2つの情報から見出し得る位相を含む位相ということだ。
§2.2.1で触れたように、位相の包含関係は意味の抽象性を表すのであった。
つまりこのような位相を持っていれば、具体的な意味は失われるにせよ、抽象的な意味は保存されるのだ。
先の表現は「副体間の対応を写像と表せるならば」という但し書きがつくだろう。
写像としての干渉については考察していないが、干渉の客観性に深くかかわる領分であるため、後の記事で詳しく触れたい。

このとき互いの情報の関係性は次の2つのパターンに分けられる。情報が位相の一部を共有している場合位相を全く共有しない場合である。
前者では共有している部分の位相が表す具体的な意味は保持され、それ以外の部分では抽象的な意味に入れ替わる。
後者では具体的な意味は全く保持されず、互いに共通である抽象的な意味だけが残ることになる。

経路の概念をその全域にわたって考察すれば、次のような重要な結論が得られる。
ある情報が異なる経路を辿って別々に変化した場合、それらが共通に保持する意味は抽象的なものになる。そして、この意味を再び具体的にすることは不可能である。
即ち、ある時点で何らかの位相を持つ情報は、干渉の経路によって意味の具体性を少なからず失う

この結論は、情報が経路を辿る過程では常に意味の具体性を失う傾向にあることを意味する。
逆に干渉によって情報が意味の具体性を獲得するというのは変な話だが、このような不要な考察の枝切りに正当性を与える根拠となる。



§2.3.1 位相の情報化

それにしても、次のような疑問が最後に残されるだろう。
位相は確かに情報の連続性を定めるが、位相が表す意味の連続性を定めるものは何なのだろうか?
この疑問は旧来の概念からは離れるが、情報の変化についての考察を抜かりなく完了するためには是非とも解決されねばならない。

位相が表す意味の連続性については2通りの解釈がある。即ち副体における連続性作用における連続性である。

前者では、位相が元の集合とは別の集合として定義されることを考えれば、位相の各元を単一の情報と解釈することで、そのような情報が属するような副体についての連続性を考察することと同義であることが分かる。
要するに副体における連続性という概念は、このような操作によって帰納的に定義されるのである。

後者においても(作用は副体上に定義されるのだから)前者と同様だと言えるが、しかし複数の異なる作用を見出し得るという点では異なる。
これについては詳しく考察して、作用についてはこれを見出すいくつかの方向性が存在し得ることを指摘したいと思う。

ある副体について連続的な作用とはその情報に定まる位相を保持する作用であり、位相を保持するとは、位相が表す意味を保持することに他ならない。
この位相は副体の連続性によって定められるのだが、その連続性が個別具体的に何を表すかは今のところ不問である。
しかし言うまでもないが、位相が表す意味についての個別具体的な考察を展開するためには連続性についてそれを行うことが必要となる。

とは言っても、位相が連続性を定めることについて、一般性を損なわなくとも以下のような解釈が可能であり、またそれで充分である。
位相は各元の間に包含関係による順序が定められる。このことは自明であり、位相に普遍の性質と言える。
すると、これを定める連続性もまた情報についての順序関係によって定められていなければならないことが分かる。
連続性が個別具体的に表すものとは、この順序関係の具体的な構造のことなのだ。

では位相の作用における連続性の考察に戻ろう。
副体の連続性が順序関係によって何らかの意味を表すとき、その意味は位相として理論によって扱われる。
この位相を保持する作用が存在するとき、意味を保持する作用もまた同時に見出されるのである。

このことを前者で考察した位相の各元を単一の情報と解釈する副体に適用して考えてみよう。
すると、この副体が扱う個々の情報については、位相の包含関係が反映されているから、そこに自然な順序が見出される。

従って、作用の連続性は副体に見出される位相が十分に密である限り、やはり帰納的に定義されるのである。
十分に密であるとは、帰納的にという表現から、位相自体が無限集合であることと厳密に定義される。
このことは、以下の文章によって連鎖的な関係性として理解できる。

最初にある副体の情報(正確には情報のまとまり)について何らかの順序による連続性が見出され、これが位相を定める。連続性と位相の存在は同等であるから、このことは何らかの順序に対応する位相が見出され、これが連続性を定めるとも表現できる。
次に位相の各要素が位相の包含関係を保持する単一の情報となり、自然に見出される順序による連続性が見出され、またしても位相が定義される。

一方で、ある副体に何らかの連続性や位相が定められたとき、その包含関係による自然な順序を定めることも出来る。
つまり順序もやはり連続性や位相と同等な概念なのである。
ただし、連続性や位相から見出される自然な順序は専ら半順序を意味することには注意が必要である。
この順序関係を前順序に拡張したり、あるいは任意の二項関係にまで拡張したものは、連続性や位相を定めるとは限らない。これらは位相や連続性に対応する半順序より一般的な概念であるということが出来る。

最後に、連続性や位相から見出される自然な順序の具体的な定め方を考察したい。結局のところ、この操作によって位相がどのように情報化するのかが決定されるのだ。
そしてこの操作は、位相の包含関係にどのような順序を与えるかという問題に還元される。

まず当然求められる一般的な性質として、順序は無限集合上に定義されるということが挙げられる。もし個別的に順序がある部分位相空間について定められるケースについても、それが無限集合ならば一般性が失われたとは考えない。(ただしこの場合個別的にはいくらかの意味は失われている)

要するに、前提となる位相空間が無限集合であるという前提から、ある操作が定めるような部分位相空間が無限集合であることが導かれるならば、それは自然な順序を定める一つの方法であると言える。
以下に何らかの明確な意味を表すであろう操作の一例を挙げるが、第一部冒頭のような厳密な証明は省略する。

A. 台集合は無限集合である。
B. 位相は無限集合である。

1. 台集合全体は位相に含まれるから、まずはこれを選択する。
2. 先に選択した要素に含まれるような位相の要素で最大のものを一つ選択する。(普通は複数見出される)
3. 2を有限回繰り返して選択した要素を基準とする。
4. 3で基準とした要素に含まれる位相の要素全体を集合とする。
5. 4で得た集合に包含関係による自然な順序を与える。

このとき、操作4で作られる集合は無限集合である。何故ならば...

I. 前提Aより、操作1で選択された要素は無限集合である。
II. 前提B,操作1より、操作2で選択された要素は無限集合である。
III. 前提B,操作3より、操作3で基準となる要素は無限集合である。
IV. 前提B,操作4より、操作4で作られる集合は無限集合である。

無限集合から任意の有限集合を取り出したとき、その補集合は必ず無限集合となることを考えれば、この証明の正しいことが理解できるだろう。

ところで、この操作は位相による順序集合上のイデアルを定義する。そして操作1~3の意味としては、最も抽象的な意味を少しずつ具体化していき、適当な基準を見出すということである。
つまり、位相による順序集合に任意のイデアルを定義してこれによって位相を情報化することは、ある1つの抽象的な意味から見出される具体的な意味を全て含めるような方法と解釈できるのである。

このような操作を定める他の概念としては、イデアルの双対概念であるフィルターも同様に証明でき、その表す意味もある種双対的なものである。
また位相の定義からして、近傍系によっても定められるだろう。この場合はある特定の情報に注目して位相を情報化することを表している。

長くなったが、このような形で定義された情報化された位相の連続性によって、元の位相の連続性は保証されているのだ。

この概念によって因果的機序における自然的な干渉という考え方を定義するならば、ある副体の連続性は位相の情報化を定める適切な操作が常に存在するという前提によって保証されていると解釈できる。
あるいはその連続性を保証する概念は、常に自然に見出される操作によって確認されるとも表現できる。



§3 因果的機序による副体・干渉の発生


あくまでも理論全体において一般的ではないが、ここで重要な事項について触れなければならない。
それは副体に属する構造の発生である。厳密に言えば、因果的機序における発生についてだ。

何故この現象を特別に取り上げるかというと、因果的機序に従う発生には必然的に明確な原因が伴うからだ。
そして原因が副体に属するということは、機序の制限内において一般的な定義が可能となるだろう。

理論において発生の対象となるような一般的な構造は、副体以外にもいくつか考えられるが、一般的な定義について定めるならば干渉や情報を挙げれば済むだろう。
しかし情報については、他の2つと根本的に異なる。実体の現象以外でも発生と見なせる場合が多々あるのだ。一方で、副体や干渉は実体の現象以外では発生し得ない。
このことは§1.1での表現を用いれば、概念的な存在物理的な存在の差異である。

また直接的な干渉は副体によって干渉場として定まるが、一般的な干渉は軸によらず見出されるから、干渉を副体に属するものとして考察から除外することは適当ではないだろう。
つまり、一般的な定義について因果的機序を考慮することで、副体と干渉の間に完全な従属関係が定められることをまず明らかにせねばならない。

以降の考察では一般的な定義に立ち返るので、理解の万全を期するために、簡単にそれらの定義を示しておく。

・一般的な干渉は二者間の集合としての副体の直積によって与えられ、一方向的に定められる
・干渉が双方向的であるのは、干渉場による作用が考慮される場合に限られる。

副体A={r,s}からB={t,u}に干渉が発生する場合を考える。
これは実体の現象なので、ある時点の情報を何らかの方法で作用させるだけでは干渉を定めたことにはならない。実体は継時的な影響を及ぼさないためだ。
必然的に、干渉を発生させてこれを定めるためには軸の一致が必要となる。そこで実体は干渉を定めるために、副体に新たな軸を見出すのである。

例えば副体Aに軸tを加えてA={r,s,t}とすることが挙げられる。この場合はAからBへの干渉が定められ、干渉が発生したと言える。
しかし、ここでは実体が因果的機序のみに制限されていることを考慮しなければならない。
即ち、因果的機序において軸の追加という操作が認められるのか?という疑問を解決する必要がある。
因果的機序は副体の自然な状態を論じる目的を持つから、軸が追加される前後の副体の状態に注目すればよい。

副体A={r,s}の表す意味は専ら軸r,sによって定められる。そして軸によって定められるということは、それに属する情報によって表されるということである。
ここで軸tが追加された状態、A={r,s,t}が表す意味について取り得る一般的な可能性は2つある。
一方は軸t上には一切情報が現れない場合。もう一方は軸tの追加と同時に軸t上に何らかの情報が現れる場合。
ただし前者は明らかに副体の表す意味が変わらず、個別的にもはや干渉が発生し得ないから、この可能性は除外できる。

後者の場合は、軸tの追加が軸r,s,tによって定められる空間上の作用をも定義するという意味である。
ここで注意が必要なのは、今は因果的機序について考察しているということである。
つまり軸tが何らかの意味を表すということには原因が存在していて、それは軸r,sが表す意味以外には考えられない。

すると軸tの表す意味は軸r,sの意味から類推されるのであって、意味的には独立して存在することができない。
このことを形式的に考えれば、要するに副体の表す意味の観点からすれば、軸tの意味は単に冗長である以上の意義を持たない。
即ち因果的機序において軸の追加という操作は認められない。

あるいは単に、軸r,sに何らかの情報が存在するという状態と、軸tの発生という状態との間には明白な因果関係は認められない、という言い方も出来る。

以上の考察によって、因果的機序による発生では軸の追加による干渉の発生は対象とならないことが明らかとなった。
だが一般的には何らかの原因で干渉が発生すると考えることは依然妥当であって、これは軸の追加とは異なる仕組み、つまり副体の発生によって実現されていると考えられる。

それでは副体の発生について考察しようと思う。
副体の発生は軸の具体的な事情によっていくつかの場合に分けられるが、その一つが先に挙げた干渉の発生を伴うものである。

ここで副体の発生が、副体A={r,s}と副体B={t,u}の間の干渉の発生を伴うとはどういうことか?
これは直接的な干渉が軸の一致によって定められることを考えれば、例えば副体C={r,t}のようにA,Bそれぞれの軸を最低1つずつ有するような副体であることが分かる。
干渉の発生を副体の発生という一般的な概念によって定義することで、個別具体的な場合における因果関係の問題を一般化して回避する一つの例である。
ただしその弊害として、個別具体的な場合の因果関係に触れられないことには注意すべきである。
この例において副体Cの発生は副体Aの状態が原因なのか、それとも副体Bが原因なのか、この結論から導き出すことは出来ないが、とにかく副体の何らかの原因によって副体の発生という結果が生まれ、次いで必然的に干渉の発生を定めると考えるのは妥当な論証である。

このように副体の発生は必然的に干渉の発生を引き起こすわけだが、この場合の干渉は軸によって定められるので、一般的には双方向的に作用すると解釈できる。
つまり副体C={r,t}によってA→Bへの干渉が発生するならば、同時にB→Aへの干渉も発生しているのだ。
これを副体Aの視点から見れば、自身が原因となって発生した副体Cとは直接的かつ双方向の干渉が発生する、と言える。

これと同じことが、例えば副体C={r,s}の場合にも言えるだろう。副体Aが原因となって、それと同じ軸を持つ副体が発生する場合に起こり得る状態である。
副体Cの発生と同時に何らかの情報が見出されるとしたら、その原因は副体Aの情報以外にはあり得ない。自明な場合として、副体Aの情報がそのまま副体Cに見出される場合が挙げられるが、これではあまり意味がない。
つまりこのような状態が個別具体的な場合に何か意味を持つとしたら、それは副体A,Cがそれぞれ異なる情報を持つ場合に他ならないが、しかしその異なる情報は副体Aが原因となっていなければならない。

すると、§2.3.1で考察した位相の情報化がまさに該当する。
軸が情報の集合として表されるとき、位相はこの集合にいわば特徴を与えるだけであり、その一般的な性質(つまり集合としての性質)は全く失われないのだ。



§3.1 軸の構造

しかし、位相の情報化を§3における副体の発生にそのまま適用することは出来ない。
少し考えれば分かるのだが、情報という概念が一般的であるのに対し、位相はその個別具体的な特徴を示すに過ぎないからである。
即ち、この場合は副体の発生について少々具体的な考察を展開し、この二概念を同じ土台で論じられるように予め準備しなければならない。
この問題の本質は、位相という個別具体的な概念によって新たに発生する副体が扱う情報が見出されることにある。

以降の考察のために、2つの前提条件を提示しておく。これらは明らかなものではあるが、理解の万全を期するためである。

1. ある軸について、情報の集合位相を定める集合は集合としては異なる。
2. 軸について任意の集合族を作ることが出来るが、一般的にはこの操作は意味を持たない。

前提1によれば、位相を定める集合の要素からそのまま新たな副体の情報が見出されると考えても、両者が表す意味は全く異なる。
例えば副体A={r,s}から副体Bが発生するとき、その表す意味が異なるのだから、実際には副体B={r´,s´}などと表されねばならない。無論このときr ≠ r´であり、s ≠ s´である。
しかし一方で、副体Aの位相から直接に副体Bの情報が見出される場合、意味的にはこの2つの副体は同一の空間上において干渉すると考えられる。即ちr = r´、s = s´が成立せねばならない。
一体この矛盾はどのように解決されるのだろうか?

これは軸によって定められる干渉について常に一般的にのみ考えることで起きる弊害である。
軸の性質についての副体の発生による個別的な関係性を無視した結果、それらの軸は異なるという解釈になっている。
この考察は少なくとも位相という個別的な概念を確かに含んでいるのだから、この干渉についても個別的に考察する必要があるのだ。

この場合では軸の個別的な関係について、副体の発生によって軸の性質についての順序関係が成り立つと言える。
つまり、このような関係にある軸を集合族と見なすことができ、順序関係を付加して(α,≤)などと表すことができる。
先に前提2で軸の集合族は一般的には意味を持たないと書いたが、この集合族は任意の関係が定義される場合、即ち個別具体的な考察において初めて意味を持つのである。



§4 創発

以上の考察によって位相の情報化と副体の発生を同時に論じることが可能となった。
また、位相の情報化によって新たな副体が持つ情報の性質については既に§2.3.1で触れてあるので、その一例としての結論をここで引用する。
つまり、位相による順序集合に任意のイデアルを定義してこれによって位相を情報化することは、ある1つの抽象的な意味から見出される具体的な意味を全て含めるような方法と解釈できるのである。
補足すれば、このような意味が位相の情報化によって見出される個々の情報に対応するのである。

このような副体の発生は因果的機序において、ある種の複雑な構造の発展を担っている重要な概念であると言える。
そこで、位相の情報化による副体の発生には創発という語を与えて、通常の発生と区別したい。

何故このような区別を設けるのだろうか?
それは創発が現実の複雑性を生み出し、また説明する根本的な要因と見なされるからだ。
自然な状態の考察においては、副体創発が考察の一大拠点となるのである。

例えばタルパにおける成長という概念は、創発によってその根本的なモデルが与えられると解釈できる。
治療学では干渉・変化・発生モデルを図解していたが、その裏には創発という仕組みが欠かせない。

創発について副体の発生を主眼とすると、これは2つの方向性に分けられる。
一方はある意味について抽象的な情報を獲得すること、他の一方はある意味を表す情報が、他の意味を表す情報と結びつくことである。

このうち前者については先に説明した創発によって説明されるが、後者については創発を含むいくつかの概念を併せて解釈せねばならないだろう。



§4.1 創発と連続性の関連

§2.3.1で説明したように、創発の基礎となった位相の情報化という概念には必然的に連続性についての考察が含まれる。
つまり、創発にしても連続性の概念は密接にかかわってくるのであるが、位相の情報化自体は副体が連続性を持つ限りにおいて帰納的に定義されていることに注意する。

先に位相の情報化の定義に従って副体が連続性を持つと仮定する場合について考察する。

ところで創発元の副体と創発後の副体は、一般的な考察においては全く異なる2つの副体と解釈できる。要するに、創発による個別的な関係性を忘れて、一般的な領域に属する概念によってのみ考察することが出来るのだ。
以下では創発の連続性について一般的な場合を考察し、次いで個別的な場合を考察する。

まずこの2つの副体に干渉を定めるには、干渉の発生を伴う副体の発生が起きたと解釈すればよい。2つの副体を副体A={α}、副体A´={α´}として表すとき、副体X={α,α´}が存在し、X上の作用によって干渉が定まる。
すると創発の連続性とは専ら副体Xの連続性あるいは副体X上の作用の連続性によって定められることが分かる。ここでは副体A,A´の連続性を仮定しているので、副体Xの連続性は前提より自明である。
即ち創発の連続性は副体X上の作用によって定まる。このとき創発の性質を考えれば、X上の作用はα→α´への一方向的な作用と解釈できるが、その連続性については確定しない。

一方で創発の性質を考慮してα = α´と解釈するならば、副体A,A´はそれ自身が定める同一の空間上で互いに干渉すると解釈できるため、X上の作用の連続性はAもしくはA´に定まる作用の連続性によって確かに定まることが分かる。

干渉の客観性については前提より自明である。
情報の変化については、作用の連続性によって定まる。これは解釈によっては一般的にもどちらか一方に確かに定まる。

次に個別的な場合について考察する。個別的な場合というのは、つまり軸の順序を仮定することである。
一般的な場合にはどう解釈するにせよ、創発元と創発後の副体は異なるのであり、その扱う情報の意味もまた異なると解釈される。
しかし軸の順序を考慮するならば、他の副体との任意の干渉について、創発による情報の複雑性とでも表現されるような概念を考察に含めることが出来る。
厳密に言えば、創発が関係するような干渉について、単純な部分複雑な部分に分割することが出来るということだ。
創発は、その軸の情報についての複雑性を表すと解釈できる。
ここで挙げた性質を複雑性と呼んでいいのかは分からないが、ひとまずこの語でもって表現することにする。

ここで、創発後の副体の情報は創発元の副体の位相に対応することについて考えてみる。
創発後の副体との干渉がその作用によって連続的でないとしたら、言い換えれば、より複雑な領域における干渉は連続的でないとしたら、それより単純な領域の連続性はどうなるだろう?

作用の連続性は意味の連続性を保つことである。その意味とは位相のことであり、その連続性は創発後の副体の連続性によって保証されるのであった。
もし創発後の副体の連続性が、その領域の干渉において保たれないとしたら...従って、元の副体の意味の連続性は保たれないことになる。即ち、作用の連続性が成り立たないのである。

このことは、次のように端的に表現できる。
より複雑な領域における作用の連続性は、より単純な領域における作用の連続性を定めるのである。

この結論は一般的な考察のみによる方法では到達できない個別的な結論であり、個別的な概念によってのみ展開できる妥当な論証である。

それでは副体の連続性を仮定しない場合、先の結論はどう変化するのだろうか?
これは即ち、創発が起こる過程で不連続的な副体が発生し、それ以降は創発が定義されないということである。
§2.2.1で挙げたことを考えれば、不連続的な副体上には連続的な作用は定義されないことになる。

これを先の結論と併せて考えれば、帰納的に副体の連続性が保証される限り作用の連続性は成立するが、副体の連続性が破れれば連鎖的に作用の連続性も破れるという結論に至る。

しかし創発の意味するところを考えれば、これによって不連続的な副体が発生すると考えることは結局は余計な詮索ではないだろうか?
創発が不連続性を考慮できるならば、全く異なる意味を持つ複数の副体を含めて論じることも出来るだろうが、それは創発よりも一般的な発生として見た方が自然である。
このような解釈は先に§4で述べた創発の2つの方向性の後者の表現を包括している。

ところでここに述べた創発後の副体の連続性は、創発元の副体の連続性によっても定められる。
要するに創発後の副体が可算集合である場合も、創発元の副体が連続性を満たし、かつ創発がその性質を保存すると言えるならば、創発後の副体には連続性が定義される

これはまさに§2.2.2で最後に述べた軸の個別的な関係性によって連続性が定義される一つのケースであるが、以下の点には注意が必要である。
個別的な関係性が定義されるからと言って、一般的な性質がそれによって完全に抑制されるわけではないのだ。
軸の性質については一般的な要因と個別的な要因が別々に存在して、それぞれの要因の一般性の程度に従って性質を規定するのである。

創発のような軸の関係は創発関係として ({αi}i∈I,≤I) という構造に表すことが出来る。
ここで詳しい説明は控えるが、創発関係≤Iは一般的に半順序である。つまり情報の変化においてもそうだったように、軸αを持つ副体間には経路の概念が適用できる。
創発関係を忘れて各αiについて考えれば自明ではあるが、ここでは創発によって得られた個別的な経路という性質をも含んでいることが考慮されねばならない。



後記

さて、以上でタルパ機械論における一般的な概念の考察を締めくくりたいと思う。
これでもタルパに応用するには不足が多いだろうが、逐一考察を展開していきたい。その際、概念の一般性実体の取り扱いには細心の注意を払う必要がある。

まずはタルパについて通常考察される概念を整理して、タルパの構成概念を一通り明らかにする。即ちタルパの創造にいくつかの受動的な方向性を与える。
その後は具体的な訓練にまで考察を拡大し、これに能動的な方向性を与えるならば、タルパ機械論はその役目を十分果たすことになるだろう。

環境の変化のため、今後しばらくはこれまでのような長大な記事を投稿することは出来ないが、少しずつ考察を積み重ねていきたい。
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